「こんなところにいないで、木にのぼろう!」

市役所の正面玄関の階段を降りたところに、生まれながらに羽が曲がったまま、コンクリートの地面に伏せて最後の力をしぼって飛ぼうとしている蝉がいました。

脱け殻が横にあったので、
どこかから落ちてしまったのかもしれません。

連休のおかげで、
車に轢かれたり、人に踏まれたりはなかったのですが…

地面に触れている身体は、蟻に蝕まれ、その半面を失っていました。

それでも、
空を飛ぼうと羽ばたく命がすごくて、蝉をそっと近くの木の根本に置いてみました。

ここにも蟻がたくさんいるけど、
これ以上、何もしてあげられない…

ごめんね。


人間の力なんて、
そんなものかもしれないね。


自然の中で生きる生物から、
「最後まで生きようとする強さ」と「自然の中で生き抜くことの厳しさ」を教えられている。


弱い人間が作った自然の中で、
人間以外の多くの命が生まれて、
多くの命が奪われていく。


特に夏は…
そんな場面が多い季節のような気がして…。