少し前のこと…
待ち合わせの大きな駅の改札へ
急ぐ私の後ろから

人並みを分けてしまうような
張り裂けんばかりの男の子の泣き声…

 

思わず足を止めて、
周りを見回す…
いた!!

 

まるで他人のように前を行く母の手を
泣きじゃくりながら掴もうとする男の子。

その小さな手が、
まるで届いて欲しくないように、
振り向くことなく歩くおかあさん。

 

すれ違う人の目が気になったのか、
おかあさんは、改札前の壁に
男の子を力任せに押しつけた。

何かできないかな…
私も少し離れて壁に寄りかかる。

 

男の子は4歳くらい。
涙と鼻水でかわいい顔がぐちゃぐちゃ。
おかあさんも素敵な顔が
般若のお面をつけているみたいに、
ひきつっている。

何があったのかな…

 

おかあさんは怒鳴りながら、
その子の背負っている小さなリュックから、
ティッシュを出し始めた。

おっ、鼻水が拭いてもらえるかな?
よかった…。

 

と、思ったのもつかの間…

また、続きが始まった。
今度はおかあさんのきれいに塗られた爪が、

男の子の腕に力一杯…
くい込んでる❗

見守り限界…出動!!

一歩踏み出そうとしたその時…

 

あんた!いくら自分の子でも、
それはアカン‼
あんたの指‼
くい込んどるよ!ひどい親やな!

60代くらいの元気のいいおばさん登場。

 

ほっといてください!
おかあさんの顔がますます怖くなって、
男の子は一瞬泣き止む。

 

火に油…
でも、おばさんの言ってること、
間違ってない。

躊躇せずに火に飛び込む勇気…
自分にあるかな…

 

自分に気持ちが向いている間に、
おかあさんと男の子は、
手を繋いで私の前を通りすぎた。

ただ、そのおかあさんの
歩くスピードが速すぎて、
男の子は泣きながら必死に小走り。

 

これじゃ、何も変わらない。
なんか話しかけるタイミング…

あった!!

さっきのリュックの口が開いたまま…

私も小走り…
思いきって…

あの…と、おかあさんの肩を触った。
まだ、怖い顔のままのおかあさんが
振り向く。

男の子は泣いている。

 

「リュックの口が開いたままだったので♪」

あ…。
おかあさんの顔が一瞬、
優しい顔に戻った‼

チャ~ンス

 

男の子って大変ですよね…
大丈夫ですか?

おかあさんの目から
瞬く間に涙がこぼれ始めた…。

 

何度言ってもわからなくて…
この子…。
私も限界で…。

 

私も1人男の子がいます。
ありますよね…そんな時。
無理しないでくださいね。

 

やり取りの間に泣き止んだ男の子に、

「おかあさんね、
君がなくと、
おかあさんも泣いちゃうって…。
おかあさん大好きだよね。
泣くのやめようか…」

「うん♪」

 

「ありがとうございます。」

おかあさんから、嬉しい一言を
いただきました。

歩くふたりの背中を見送って、
内心ドキドキの気持ちを静めました。

 

親子の激しい場面で必要なことは、
批判よりも共感のような気がします。

おかあさん、おとうさん、
がんばってる手をゆるめてみても
きっと大丈夫♪

 

子どもたちの力を信じてみましょう。